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離愁 | 多島斗志之

e0012194_0451857.jpgただいま、多島斗志之さんにハマってます。一人の作家にハマったのは貴志祐介さん以来かな。『離愁』という、タイトルだけで泣けてきそうな文庫を手に取ってみました。文庫化にあたっては、刊行されたときの『汚名』を改題したそうですが、ボクには『離愁』の方がしっくりきます。

僭越ながら『不思議島』のときに「少しだけ古い感じのする、淡々とした」と評した文体が、大戦前後の昭和を舞台にするこの作品では見事にぴったり。第四章の手記は別としても(これはこれで現代人にはおもしろい)、第十章のXX!の独白は雰囲気が良く出てます。多島さんの文章ってどこが魅力的なんだろう?特徴のある文体ではないのになぜか心に残る。「淡々とした」印象を受けるように文体そのものは簡潔なんだけどなにかが伝わってくる。とくに女性の描写が清潔に生々しい(うまい表現が思いつかん)んですよね。

物語りは極上の大人のラブストーリーです。そしてちょっぴりミステリー。
甥が叔母の半生を調べるうちにいろいろと明らかになるという、ときどき見かける構成ですが、この手の筋立てに、どうして主人公はこんなに好奇心旺盛にズカズカと他人のことを調べるんだろう?って違和感を感じたことはありませんか?この作品では、その辺の必然性が見事です。

とびらで始まる「今のわたしたちが交わす・・・お伝えへします。」という言葉が何処へつながるのかはお楽しみ。しんみりしちゃいます。
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by dlynch | 2006-09-06 01:26 | book
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