このカバーデザインいいですね。まさに
『影踏み』の真壁の日常。ハードボイルドな主人公とはいえ、寝静まった家に侵入するノビ師の日常は、ホテルのバーでブランデーを傾けるわけでもなく、街路灯に照らされた夜も明けきらない路地裏でひっそりと自転車に跨るんだろうなと。
刑務所から出所してきたノビ師(深夜に家屋に侵入する泥棒)が、ぶち込まれるきっかけになった事件の疑問を明らかにするうちに別の事件に巻き込まれていくという、長編のような短篇集のような不思議な流れを持つ物語。品行方正に生きる一般市民には、そこかしこに登場する符牒だけでも楽しめます。双子の弟との会話はある種のファンタジー。ちょっと泣けた。
推理小説としては伏線の張り方や意外性が面白かったけど、修一と啓二、久子の人間模様がちょっと中途半端な気がする。切なさよりももどかしさが残っちゃった気がして、なんだかすっきりしない。久子さんには未来をあげて欲しかったなぁ。