『塩狩峠』は自分にとって文学の原点のような作品。大げさではなく、生き方が変わった1冊。
主人公の信夫は「明治の御代になって、世は軽佻浮薄だというが、あいつはどうしてどうして」と上司から評されるんだけど、昭和から平成に移るバブル期に大学生活を送っていた新人類にしてみれば、世はさらに比較にならないくらい軽薄になってるわけで、何事にも全身全霊で取り組み、真剣に考え抜く信夫の姿勢は衝撃的でした。
自分自身を自ら律するというのもこの本から学んだこと。誰かに見られてるからとか、世間がこうだからとかじゃなくて、自ら考えて、自ら判断して、自らその判断に従う。初めて読んでから20年以上経つけど、それは今回読んでも変わらなかったなぁ。そして、信夫には到底追いついてない。
三浦綾子さんはクリスチャンなので、彼女の作品にはキリスト教が深く関わってます。とくに『塩狩峠』はその傾向が強いので、ともすれば胡散臭さや気味悪さを感じてしまうかも知れないけど、それもエピソードの一つだと捉えて読み進めれば、こんなに教えられる小説って、そうそうないと思うのです。