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サウスバウンド | 奥田英朗

サウスバウンド | 奥田英朗_e0012194_21345564.jpg夢のある楽しい物語が平易な文章で綴られているので、あーおもしろかったで済んじゃいそうな『サウスバウンド』だけど、父性の低下が指摘される現代にあっては、もしかすると相当な傑作かも。含蓄のある台詞や痛烈な皮肉が全体をピリッと引き締めてるしね。

右だろうが左だろうが政治運動なんてうざったい以外のなにものでもなく、理屈屋が嫌い、おまけに長くサラリーマンをやってる身からすると、前半の一郎の発言や行動にはイライラさせられるのだけれど、その信念を貫き通す姿が後半になるにつれ際だってきて、気がつけばファンになってる。あんな風に何にも媚びずに自由に生きてみたい。父親ってやっぱこうじゃないと。いや、男ってこうじゃないと。

一方で、そんな感想を持ち始めた読者を突き放す「警察や企業に楯突く一人の男を・・それが父以外の、大多数の大人だ」という二郎くんのコメントはなかなかに痛烈。ここまで物語を作っておいて、こんな風に言わせるなんて。その二郎くんの成長物語ともいえる前半もなかなかよかったんだよねぇ。

主役の一郎と語り手の二郎はもちろん、さくらや洋子、桃子、南先生、黒木、向井、七恵、新垣、ベニーさん。脇役のキャラクターもとってもよくって、楽しくて、爽やかで、何かを感じられるすばらしい小説。あー南の島に行きたいなあ。
by dlynch | 2007-09-23 21:34 | book
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