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半島を出よ(下) | 村上龍

e0012194_23393953.jpg上下巻を読み終えて感じたのは、『半島を出よ』は村上龍らしい小説だなぁということ。系列は『愛と幻想のファシズム』や『五分後の世界』と同じ。そこにマイノリティとマジョリティの構図が持ち込まれて、日本の危機管理能力の低さや責任の所在の曖昧さが指摘され、危機を現実と捉えられない国民の姿が投影され、マスコミの視点の甘さが揶揄される。その代わりSMやエロはなし。

村上龍らしいのは文章もそう。あんな風に暴力的で緻密でグロテスクで、息が詰まるような文章を書ける文才ってすごい。テーマがテーマなだけに、北朝鮮のコマンドや兵器、化学の描写に目がいきがちだけど、「無添加のワッフルをオーブンで焼き、国産のレンゲの蜂蜜をかけて、有機農業で作られたフルーツトマトと、その日しぼりたてだというオレンジジュースと、小岩井農場の低温殺菌の牛乳」なんて描写は普通できないでしょ?イシハラの妙な言い回しにしてもそう。作家だからといえばそれまでなんだけど、一般的な作家と較べてもレベルが違う。漫画でいう井上雄彦のような圧倒的な違い。

ただあまりにも書き込み過ぎなのでは?という箇所も見受けられるので(コマンドたちの思い出やタケイが武器を披露するところとか)、そこを軽くして日本政府や福岡の役所、業者、市井の人、マスコミの視点にももう少し誌面を割いて欲しかったかな。もう一冊分書いてくれてもいいくらい。

いずれにせよ、よい意味でいろんなことを考えさせられました。話題になったのがよく分かる。マジョリティにいるんだから、せめてヒトとして生命力のある生き方をしないと。
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by dlynch | 2007-11-10 23:43 | book
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