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閉鎖病棟 | 帚木 蓬生

e0012194_2223276.jpg『閉鎖病棟』というタイトル通り、とある病院の精神科病棟の人々を丁寧に淡々と綴る前半は、あだ名で呼称されてるためか人物関係や登場人物の症状がなかなか掴めず、また、誰の視点で語っているのかが分からなくて混乱してしまい、活字をただ追うだけだったものの、とある殺人事件をきっかけに引き込まれました。

といっても、引き込まれたのは事件の種明かしや犯人捜しではなく、その背景にある動機にです。丁寧に病棟の様子を綴っていたのはこのためだったのかと納得。

したり顔の知識人なら、秀丸さんがとった行為を文化的ではないとか、非人道的だと責めるんだろうけど、家族や親しい人を亡くした人なら、誰にも批判できない当然の行為だと思う。「利益ですか-」に続く言葉に集約される感情でいっぱいになるはず。彼女はみんなの希望だったわけだし。その秀丸さんの決意、チュウさんの覚悟、島崎さんの再生。何度も読み直しました。

一方でチュウさんの妹夫婦に腹を立ててはいけないとも。こうした物語を読んでしまうとどうしても、患者側に感情移入しちゃうけど、実際に家族の誰かがああなったら、肉体的にも精神的にも、経験したことのない者には想像できない苦痛に苛まれるんじゃないかと。

明るい話ではないけれど、読了後はなんだか幸せな気持ちになれる不思議な魅力を残してくれます。
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by dlynch | 2008-01-21 22:23 | book
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