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スプートニクの恋人 | 村上 春樹

e0012194_1833913.jpg中国オフィスに勤務しているスペイン系米国人と新宿の居酒屋で飲んでいたときに、日本の作家の小説がおもしろかったというので、よくよく聞いてみたら『国境の西、太陽の南』のことで、ムラカミ作品は本当に海外で評価されてるんだと実感しました。文学とは何の関係もないビジネスピープルの会話に出てくるくらいだから。

そんなわけで『スプートニクの恋人』。かの『ねじまき鳥クロニクル』と『海辺のカフカ』の間に上梓された、どちらといえば世間から評価の低い作品です。僕自身もほとんど記憶に残ってなくて、せっかくの沖縄なのでビーチで読み直してみようかなと。ムラカミ作品って、海辺で読むのにぴったりなんですよね。気怠い感触が合うんだろうか?

『海辺のカフカ』のインタビューの中で、『スプートニクの恋人』のことを「次の長編小説のための準備」として「これまで僕が使ってきた文体の総ざらえみたいなことを、ここでとことんやっちまおう」だから「物語という以前に、文体のショーケースみたいになっている」なんてことを述べてるわけですが、物語の軸は恋人の失踪とあちらがとこちら側、登場人物はモラトリアムなぼくとエキセントリックなすみれ、上品な(そしてどこかに影のある)大人のミュウで、井戸も猫も登場するし、料理のディティールも健在、そして文体という意味では、ムラカミ比喩のオンパレードと確かにこれまでの総ざらえのような小説です。

だから9年前の自分の記憶に残らなかったのかな。いま読み返してみると、前期:村上から後期:村上の(勝手に命名しました)ターニングポイントになる作品で、にんじんとのくだりはこの後のカフカにつながっていく感じがして、これはこれでおもしろかった。やっぱり村上春樹の世界だしね。

今回、一番感銘した比喩は「もちろん。この混じりけのない心を、そのままとりだして見せたいくらいだ」。うむ。
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by dlynch | 2008-07-14 18:07 | book
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