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国境の南、太陽の西 | 村上 春樹

e0012194_23333775.jpg『スプートニクの恋人』『東京奇譚集』と続いたおかげで、自分のどこかに火がついてしまったようで、成田の本屋さんで『国境の南、太陽の西』の文庫本を買ってしまいました。結局、アトランタでは本を読む時間は全くなかったので、読み始めたのは最終日の夕飯からなんだけど。

最初にこの本を読み終えたときのことはよく覚えてます。たまたま金沢に出張しているときで(2人は石川県に旅行に出かける)、雪がしんしんと降っていて(島本さんは雨と共に現れる)、喫茶店で読み終えたから(2人はジャズバーで再会する)。この微妙にズレてるシチュエーションがなんだかおかしくて忘れられません。

もう一つ印象に残っているのが、装丁のデザインと本文で使われている書体。とくに少し縦に長くて柔らかい感じがする明朝体が、文書になったときの行間のバランスも絶妙で、あれがタイポグラフィを意識した初めての体験でした(文庫版はダメダメです・・)

肝心の中身の方も、ストーリーも文体もいい意味でそれまでの村上春樹らしさが裏切られていて、この後にも先にもないメロドラマ風な展開はムラカミファンには新鮮。ハジメくんはそこそこに真っ当に生きている社会人だし、井戸に落ちたりすることもない。この本を誰かに説明しようとすれば不倫小説になってしまうけど、ここで描かれてるのは不倫に走る男女の心理ではなくて、喪失感のやるせなさとそれでも失った何かを埋めようとする性。現実なのに手応えが感じられないもどかしさ。そして「そうしないわけにはいかない」悲しさ。なぜだか『ノルウェイの森』とは違って、何度読んでもいつも同じ感想に行きつくんだよねぇ。
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by dlynch | 2008-08-01 00:05 | book
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