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カテゴリ:book( 133 )

スティーブ・ジョブズ 神の交渉力 | 竹内 一正

e0012194_23484417.jpgワタクシの仕事における最大の自慢は、日本で最後の開催となったMacworld Tokyo 2002のキーノートに数分とはいえ登壇し、かのスティーブ・ジョブスと壇上で肩を並べたことです。えへん。

このときのリハで驚いたのは、仕切りがApple Japanではなく、本国のスタッフだったこと。厳重なセキュリティを通過して、会場を覆う黒い布を捲って中に入ったそこはApple Inc.。そして、内容のチェックが細かくて、何かといえば「それはジョブス的にNGだから変更して」(たぶん、フィリップ・シラーだったと思う)とうるさいうるさい。ジョブスというカリスマの存在を肌で感じたのでした。

『スティーブ・ジョブズ 神の交渉力』を読んでいると、そのカリスマを形作るネゴシエーションのエピソードがこれでもかと紹介されるわけですが、一般ピープルには真似できない交渉術ばかりなので、ここから何かを学ぶと言うよりも、歴史書でも読む感覚で、偉人の行動に驚き、憤り、感心するのが正しい読み方かな。

ちなみに、このときに眼前で見たジョブスのプレゼンはいまでも脳裏に焼き付いてます。通常、よいプレゼンターに出会ったときは、ああいう見せ方や間の取り方を自分のプレゼンにも採り入れようと考えるんだけど、あまりにもレベルが違いすぎて、どこを真似すればいいかさえ分からず、ただ、その魅力と迫力に陶酔。あれは、神のプレゼンでした。
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by dlynch | 2008-11-23 23:57 | book

天使のナイフ | 薬丸 岳

e0012194_0333954.jpgときどき本屋に平積みされていて気になっていた『天使のナイフ』。この機会にと思って読み始めたらこれが大当たり。久しぶりにおもしろいミステリーに出会えました。

多くのミステリーで、少年法の過剰なまでの少年犯罪者の保護に疑問を投げかけ、被害者のやりきれない思いを軸に物語を組み立てていくケースは多く、この作品でもその視点は同様なんだけど、加害者側の心理や状況にも踏み込んだところが、これまでの作品とは違うところ。桧山に自分を重ねながらも、またもや考え込んでしまいました。『さまよう刃』で考え込んでしまった方はこちらもぜひご一読を。

ミステリーとしても一級品で、果たして犯人はだれなのか?そこに至るまでの課程が作り込みすぎなんじゃないかというくらいのものすごい仕掛けになってます。これから集中して読んでみよっと。
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by dlynch | 2008-11-19 00:46 | book

魔王 | 伊坂 幸太郎

e0012194_0274381.jpg伊坂 幸太郎、人気ですね。これまで3冊読んでみたものの、自分には今ひとつピンと来ず、でも、『ゴールデンスランバー』がこれだけ絶賛されていて、書店に行けば特設コーナーができてるともなれば、気になってくるので『魔王』を読んでみました。

でも、やはりピンと来ず。前に『グラスホッパー』を読んだときに「会話のさせ方は軽妙で楽しい」と書いてるんだけど、たしかに軽妙は軽妙。でも、どこか嘘っぽい感じがする。舞台で交わされてる会話のような違和感を感じたのでした。宮澤賢治やムッソリーニの引用もそう。どこかとってつけた感が拭えない。

一番の不満はファシズムを含む、政治的な要素がとても重要であるにも関わらず、そこがとっても薄いこと。『愛と幻想のファシズム』の足下に遠く及ばない。だから、犬養というキャラクターちっとも掴めず、安藤との対立もイメージできない。ディテールをきちんと書くことって、大勢を把握するために重要です。

クラレッタのスカートを直す人間ではありたいですな。
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by dlynch | 2008-11-13 23:59 | book

闇の子供たち | 梁 石日

e0012194_23453567.jpg『恋人たちの予感』にほのぼのする一方で、対照的に気分をどん底まで下げてくれたのが『闇の子供たち』。映画化されて話題になってるので、どんなもんかと軽い気持ちで読み始めたら・・参りました。

これを読むときには覚悟を決めて臨まなければなりません。幼児売春や臓器売買という単語だけでは想像がつかない、恐るべき生々しい現場を、これでもかと描写を重ね、とくに前半はその連続なので、気分がどんどん下がっていきます。フィクションなんだからと言い聞かせても、こんな現実が世界のどこかにあるんじゃないかと想像しちゃうので、やりきれない。ペドファイルってほんとに存在するんだよね?怖い。

最後にとった南部と音羽の行動の違い。とちらが人として正しいのか、日本人としてとるべき行動なのか、読み終えて一週間経ったいまでも結論は出ません。たぶん、こうして日本で普通に暮らしている限り、結論は出せないとも思うし。

あーこんなにコメントが書けない作品は久しぶり。また読んで出直してきます。さて、映画はどんな出来になってるんだろうか。
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by dlynch | 2008-11-12 23:49 | book

スマッシュ×スマッシュ! | 松崎洋

e0012194_23162320.jpg武蔵小山の商店街にある本屋さんの店先に平積みされてた『スマッシュ×スマッシュ!』。著者のことはまるで知らなかったけど、「感動のテニス・ストーリー」という帯のコピーに惹かれて買ってしまいました。

これがとってもよかった。プロのテニスプレイヤーを目指す勇太を軸に、その彼女の香織、アスペルガー症候群の颯人とその母親の結子、スナックで働くリコとゆいが絡んで、成長していく物語なんだけど、それぞれに抱えている悩みがほぐれていく様が実に爽やか。とくに勇太が世界を相手に転戦しながら成長していく様子は、何か一つのことに人生を賭けることの苦しさと素晴らしさを伝えてくれて、胸が熱くなります。颯人もそう。人が立ち直るときって、やっぱり人がきっかけになる。青春っていいよね。そして、ベンとルルドの存在。犬好きとしてもこんなファンタジーはたまりません。凹んでいるときに読んだせいか、陳腐な言い方で少し恥ずかしいんだけど、この本には勇気をもらいました。

シンプル過ぎるほどシンプルな文体で、あっという間に読めちゃうので、文章好きには物足りなさもあるけど、お奨めです。こんな本に出会えることがあるから、街の本屋にはがんばってもらいたいなぁ。Amazonで買うのは極力控えるようにしないと。
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by dlynch | 2008-11-01 23:31 | book

ナイチンゲールの沈黙 | 海堂 尊

e0012194_024759.jpg『チーム・バチスタの栄光』の人気はすごいですね。映画になって、ドラマになって、そして、本屋には田口・白鳥シリーズ第2弾と銘打って、『ナイチンゲールの沈黙』の文庫本が平積みされはじめたので、手に取ってみました。

前半はなかなか楽しい。田口先生と子供たちの会話がほんわかして、でもキレがあって、少々くどめの文体も健在で、バチスタだけで終わる作家じゃないなぁと読み進めていたのに、冴子と小夜が頻繁に登場するようになってから違和感を覚え始め、加納や白鳥が出てくる頃には、脳内に疑問符が点灯。えっ?もしかして、歌声がXXでXXなわけないよねと。

でも、下巻に進む頃には、すっかりその方向で話が進んでしまったのでした。メディカル・エンターテイメントといえば、聞こえはいいけど、バチスタが本格的な医療ミステリーだっただけに、おちゃらけすぎた感がどうしても拭えず。バッカスのネタにしても、やり過ぎじゃないかなぁ。おもしろくなくなかった訳でもないので、次号に期待するかな。
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by dlynch | 2008-10-29 00:26 | book

追憶のかけら | 貫井 徳郎

e0012194_22575158.jpg激務の最中に読んでいたせいか、なかなか前に進まず、この前の飛行機の中でようやく読み終えた『追憶のかけら』。それ自体はおもしろいものの、全体の1/3に達そうかという旧仮名遣いの手記が現代人の頭にはなかなかスムーズに入ってこなかったようで。

これくらいの厚さの小説になると、相当に込みいった事情が驚愕の事実と共に明らかにされたり、作者の痛烈なメッセージがそこかしこに垣間見えたりと、読了が近づいてくると、早く終わって欲しいような、終わって欲しくないような、そんな気分になるものなんだけど、この作品については、ふーんで終わってしまいました・・。謎解きの意外性に今ひとつ説得力がないことと、最後の最後にとってつけたようなエピソードがあるからじゃないかと思うけど、どうだろう?そんな理由で、そこまでするのかなぁ。

中盤の佐脇の手記は、貫井さんが相当に勉強を積んで書いたんだろうなと思える力作で、確かに小説全体の雰囲気を盛り上げているんだけど、これが手記として存在していることの意味がどうにも薄い。その心境に至っている作者が、手記をこんなドラマティックに書くんだろうか。それに手記にまつわるエピソードがそんなんだったとは。

そこが咲都子も惚れたいいところであるにせよ、松嶋の行動にはいささかとろいところがあり、えっーそこに引っかかるなよーと思った箇所もちらほら。全体的にピリッとしない、もわっとした感じが残ったまま終わっちゃったのでした。
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by dlynch | 2008-10-27 23:03 | book

まちがいだらけの自転車えらび | エンゾ早川

e0012194_232185.jpgさてさて自転車ネタが続きます。昔から何かに興味を持つと関連する書籍や雑誌を読み漁る癖があり、この『まちがいだらけの自転車えらび』そんな行動パターンから手に取った一冊。

タイトルが巨匠・徳大寺有恒の全34冊の名著(うち17冊が私の本棚に並んでたりして)のパクリなので、あれと同じように最新のロードバイクを一台一台、丁寧かつ独自の世界観でレビューしているのかと思いきや自分の思い込みと自分が好きな世界の取り巻きをつらつらと書き連ねているだけなので、カンパで組んだ台湾製ではないGIOS以外のロードに乗っている人には、とくにGIANTやTREKが好きで乗っている人は気分を害すだろうなぁという、稚拙、そしてオタクな評論書です。言ってることが矛盾しているところも多々ある。

とはいえ、そういう彼の持論を笑い飛ばせる余裕のある人にはなかなか興味深い内容であること事実。確かに軽ければ全て良し的な風潮はどうかと思うし、自転車はメインテナンスが命でもあるので、スキルもないのに安いからといってネットで買うのは勧められないし。それに、これを読んでから、無性にクロモリのロードが欲しくなっちゃったし。貯金するかなぁ。

それにしても、最近はちょっとしたロードブームですね。もちろん、TARZANの『カラダがよろこぶ自転車』は寝床で読んでいます。
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by dlynch | 2008-10-22 23:25 | book

邪魔 | 奥田 英朗

e0012194_22481743.jpg担当している製品のリリースが間近に迫ってきた関係で忙しいの何のって、せっかく『邪魔』という楽しい小説を読み終えたのに、10日後の今日ようやくレビューが書けました。

軸になっているのはとある放火事件。この捜査に加わった所轄勤務の警部補・久野、その事件の第一発見者である及川の妻・恭子が主人公で、ここに警察内部の諸事情やその諸事情に巻き込まれるチンピラ高校生が関係してくるんだけど、サラリーマンとして怖いなぁと感じたのは及川本人のこと。経理課長というポストに就いていれば、ふと邪なことを思いついたときに、やってしまうかどうかは本人の自制心だけで、そこを一歩でも踏み外すとどうなるか・・・怖い怖い。

怖いといえば、恭子の変わりっぷりも怖い。小さな幸せを求める平凡な主婦って、結局は夫と子供に寄りかかるだけの自立心も展望もなにも持ち合わせていない空虚な存在なわけですが、そこか崩れるとどんな狂気に走ってしまうのか。桜桃の会に傾倒していく様が端で見ていて(読んでいて)怖い。『サウスバウンド』もそうだったけど、奥田さんって、志が低い反体制団体が相当に嫌いみたい。

見たくないことに目をつぶるとどうなってしまうのか?一歩でも踏み外すとどうなるのか?怖いですよぉ。
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by dlynch | 2008-09-03 22:48 | book

本は10冊同時に読め! | 成毛 眞

e0012194_065751.jpgちなみに著者の成毛さんは今の勤務先の元社長。かぶったことはないけど、元社長がどんなことを書いてるんだろうと興味を持って、『本は10冊同時に読め!』を手に取ってみました。1回のランチで読めちゃうくらいの文量です。

彼が勧めている超並列読書術って、いまビジネス書でベストセラーの勝間さんの読書の仕方と似てますね。ベットサイドとかトイレとか、すき間の時間ができそうなところに本を配しておいて、平行して読み進める。ジャンルはバラバラ。「短い時間にその本の趣旨や世界観をつかもうとするので集中して読める」と説いてるんだけどホントにそうかなぁ。1冊の本に集中しないと趣旨や世界観は掴めないと思うんだけど。

行列のこととか、お金で時間を買うこととか、本に関係のないところでは共感できるところがあったものの、肝心の本に対する姿勢は、情報を得ておかないと庶民で終わっちゃうよ、成功者にはなれないよという浅ましくて貧しい発想から来ていることが分かった時点でがっかりしてしまいました。彼が言うところの「本」とはノンフィクションのことで、「ほとんどの文学作品は読む価値がないと思っている」そうです。そういう感受性に欠ける人な訳です。

論理的な破綻も多く、ハウツー本を貶しておきながら見事にハウツー本になっている矛盾、それだけの読書量にも関わらず、知性も品位も感じられない文体。もうがっかり。マキャベリをまんま実践するような社長の下で働くのはやだなぁ。
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by dlynch | 2008-08-30 23:06 | book