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カテゴリ:book( 133 )

空中ブランコ

e0012194_0353717.jpgAちゃんに勧められて読み始めた『空中ブランコ』

ここのところ、読む作家が固定化していたので、ここいらで新風を入れてみるかという気持ちもあって、作品名も奥田英朗という作家のことも全く知らないまま読み始めてみたところ、これがオモシロイ。

ここでいうオモシロイというのは、いわゆる映画や本を見たときの「おもしろかったぁ」という意味ではなくて、ワッハッハッと笑うオモシロさ。いや、この本の場合、正確にはクックックかな。ときどき、ツボにはまってぷぅ~っと吹き出します。

このオモシロさを支えているのが、主人公の精神科医・伊良部のキャラクター。30歳後半(あら、同世代だ)ながら、ただの子供です。だからといって、子供キャラを装っているようには見えない。でもって、コイツがすることは患者が属する世界でまさに子供のように遊ぶだけ。そこになにかしらの根拠や意図があるようには見えない。岬美由紀のような、洞察力もなければ慈愛もない。でも、治っちゃう。

もう一つオモシロイのが伊良部を訪れる患者の悩み。本人たちは至ってまじめなので、こういっては失礼なんだけれど、悩みそのものがおかしいケースもあれば、治っていくプロセスがおかしいケースもあって、いろんな箇所がおかしくって笑っちゃいます。そんな笑いの中でも、最後のエピソード「女流作家」はホロリときました。

さっぱりと軽い文体なので、就寝前に読むと気分よく眠れること間違いなし。
遠慮がちな人や二の足を踏む人、恥ずかしがる人にはバイブルになる可能性も秘めてる。

Aちゃんサンクス。
ハッピーエンド純愛物語だとばかり思ってたので、ちょっと新鮮。
こーゆー本が好きだとは知らなかったよ。
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by dlynch | 2005-08-06 00:45 | book

カウンセラー

e0012194_20214547.jpg『ヘーメラーの千里眼』を買うつもりでamazonを訪れたら「この本を買った人はこんな本も買ってます」のところで紹介されていて、うっかりクリックしてしまった『カウンセラー』。amazonのマーケティングにまんまとハマってしまったワタシですが、カートにいれておいてよかった。極上のサスペンスです。文句なしにオモシロイ。「催眠」シリーズでは一番のできじゃないかな。法の矛盾、とくに少年法における被害者側への配慮のなさに対するアンチテーゼとしても一級品です。

家族を殺された女性教諭に復讐心が芽生える、でも教育者としての信条もあり葛藤が。彼女を救うべく嵯峨が立ち上がる・・なんてストーリーを想像してたんですが、そんな安易な想像はかるーく打ち破って遙か先へと展開を見せてくれます。サスペンスとしての面白さは、物語の展開にあたって繰り広げられる心理描写。もちろん、その心理描写を支えるのが臨床心理学で、こ難しい専門用語がいっぱい出てくるんですが、そこが楽しい。唯一、惜しいというか不自然に感じたのが、あるきっかけを呼び起こすために打った大芝居。リアリティを出すための伏線が欲しかった。かなりのお金がかかったと思うんだけど、誰が出したんだろう?

シリーズを追うごとに完全無欠のスーパーヒロインぶりに拍車がかかって、もうあとは宇宙人と対決する以外にないんじゃないか?くらいまで、自分たちの日常とはかけ離れてしまった岬美由紀(それはそれでエンターテイメントとして面白いんだけど)に対して、嵯峨敏也には、いつまでも日常で活躍して欲しいと切に願います。
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by dlynch | 2005-07-09 20:25 | book

13階段

e0012194_152720.jpg『終戦のローレライ』を読んだあとだったので精根尽き果ててしまって、なかなか次の小説が手につかず、友だちに勧められながらもベッドサイドに置きっぱなしだった『13階段』。出張のお供にと持ち出したのが大正解でした。1人で飲むときは大抵文庫本を携帯するんですが、泊まってるホテルのバーで読み始めたら、コレが止まらない。1時を回った頃にバーテンダーにやんわりと閉店を促され、結局部屋に戻ってから3時頃まで読んでました。

基本は犯人捜しのミステリーなんですが、ベースには死刑制度の在り方という重いテーマが横たわっていて、死刑や犯罪に対してさまざまな立場の人が登場するので、人間ドラマとしても物語にのめり込んでしまいます。三上と同じ立場に立たされたら?南郷のように刑務官として死刑を執行することになったら?樹原のように記憶を失ったまま死刑をうけることになったら?

ミステリーとしても優れているのは、こいつが隠してることはたぶんこーゆーことだろうな、あれ?もしかして違うかも、こいつがこいつだったんだ!え?違うの?じゃあ、あいつは?という具合に、何か隠してあることを匂わせつつも、明らかになったこと(明らかになったと思わせたこと)が、別の疑問を呼んでくるという展開のおもしろさですね。そんな極上のストーリーをシンプルな文体でぐんぐん引っ張っていく。

高野和明さんのこれからの作品が楽しみです。
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by dlynch | 2005-06-29 01:08 | book