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カテゴリ:book( 133 )

狐火の家 | 貴志 祐介

e0012194_081654.jpg大傑作『新世界より』と同時期に出ていた『狐火の家』。貴志さんの作品はどれも好きなんだけど、正直なところ『硝子のハンマー』は印象が薄い。弁護士・純子と防犯探偵・榎本 堂々のカムバックって、帯に書かれても思い出せないくらいに。なので、そんなに期待せずに読み始めたら、ほぼその期待通りでした(苦笑)

中身は密室をテーマにした4つの短篇集。密室の謎が解き明かされるときは、それなりに凝ったトリックに驚かされるんだけど、密室であるが故に文章を脳内で空間に変換して状況をイメージしながら読み進めないと楽しむことができず、これを就寝前の寝床でやってると間違いなく睡魔がやってくるんだな。

貴志さんらしく妙にディテールに凝ってることを除けば、あっさりとした筆の運びで、純子と榎本のまさにちょっぴりファニーなやりとりが軽妙で楽しく、人物や動機の背景をつらつらと書き込むようなこともしていないので、さらっと読めます。感情を移入するんではなくて、トリックを楽しむ感じ。でも、こうさらっと読めちゃうのは貴志さんに望むところではないんだよなぁ。何年でも待つので、重厚なやつをお願いします。
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by dlynch | 2008-06-21 00:13 | book

3年で富裕層になる! | 臼井 宥文

e0012194_17181272.jpg扇動的なタイトルに惹かれて『3年で富裕層になる!』なんて本を買ってしまうあたりに、私の小市民根性を露呈してしまってますが、自分と家族のことだけに時間を使える人生を手に入れられるのなら入れてみたいのはホンネ。なんか参考になるかなと思ってね。

結論から言ってしまうと、この本は富裕層になるための心構えを説きつつ、成功事例を紹介しているだけなので、鵜呑みにして実践してしまうのは少々危険です。成功事例の10倍は失敗事例があるはずだというのが私の持論で、安易にFXや不動産に手を出すのはむしろ貧困層への近道になっちゃうんじゃないかな。宝くじやギャンブルをチャンスとして奨励している箇所があるんだけど、それって健全か?やけにボランティアを奨励するのも、米国的価値観を押しつけられているようでちょっと鼻に付くし。

とはいえ、何もしなければ、サラリーだけでは生涯年収2億円程度の人生で終わってしまうのも事実で、方程式として紹介されている資金を貯め>レバレッジをかけ>1億円で基礎固めという理屈とこのステップを踏むための気構えみたいなものが書かれてる三章のメンタル編は参考になります。ここで語られていることは人生にとって重要なこと。

さて、来年の今頃はカリブ海にプールつきのクルーザーを浮かべて、キレイなおねえさんと水辺でちゃぷちゃぷできているでしょうか(笑)
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by dlynch | 2008-06-14 18:08 | book

さまよう刃 | 東野 圭吾

e0012194_23573297.jpg本屋に寄ってみたら、東野圭吾の新刊『さまよう刃』が出ていたので、即買い。昼休みに読み始めたら、あっという間で翌日の昼休みで読み終えてしまいました。いつものことながら、ストーリーテーラーですね。

物語は表紙裏のあらすじでほぼ掴めます。謎を楽しむのではなく、この物語をどこに帰着させるのか?を想像するが正しい読み方かな。復讐を完遂させては、この小説で問いたかったはずのテーマが崩れちゃうし、かといって復讐をさせてあげないと読者が納得しない(私も納得しない)。その相反する結末をどこに落ち着かせるのかをあえて考えないように読み進めてたら、とんでもない事実と共に見事なラストが待ってました。もう脱帽です。

軽い文体でコメントしてますが、少年犯罪が多発する今の社会では、フィクションとは思えないほどリアリティがあって、登場する少年たちやその親には本気で腹が立つし、その犯罪の内容たるやフィクションと分かってはいても、目を背けたくなります。女性は正視できないかも知れない。それに、もしも自分が長峰の立場だったらと思うと、想像すらしたくないほどの凄惨な体験なわけで、自分なら伴崎の部屋で発狂するだろうな。

あらためて少年法について考えさせられました。自分には何ができるだろうか・・。
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by dlynch | 2008-06-03 23:57 | book

続・氷点 | 三浦 綾子

e0012194_22583457.jpg一生を終えてのちに残るものは、われわれが集めたものではなくて、 われわれが与えたものである。

『続・氷点』でゆるしを欲する陽子に、祖父がジェラール・シャンドリの引用だとして、語って聞かせたこの言葉は、私の座右の銘です。Give and Takeは、ビジネスの基本ではあるけど、自分個人を売り込みたいときはTakeなんて考えずに、ひたすらGive Give Give。『効率が10倍アップする新・知的生産術』にも、そんなことが書いてあったっけ。だから、なにかと出し渋ったり、見返りを求めようとする人にはがっかり。与えても与えてもまだ何か出てくるそんな人間になりたいもんです。

赦し(あえて漢字で書く)って難しいテーマだよね。お恥ずかしい話、大学の専攻が西洋哲学だったので、魂の救済とか福音を学んだことがあるんだけど、バブルに浮かれていたへらへら大学生には全く理解できず、それなりに年を重ねた今の立場でこの小説を読んでみても、それがどんなことかなんて、まだまだ分からない。赦しを請うような状況に追い込まれることがなければ一生分からないだろうな。

おもしろいとか、ためになるとか、感動するとか、そんな一通りの言葉では語れない魅力が『氷点』『続・氷点』には溢れてます。韓流ドラマで古典的な恋愛観に涙しちゃう人もぜひ。
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by dlynch | 2008-05-29 23:04 | book

氷点 | 三浦 綾子

e0012194_22374039.jpg最初に『氷点』を読んだのは23-4歳の頃のこと。大阪出張の帰りの新幹線で読み始めて、寮に戻っても読み続け、やっと読み終えたと思ったら、あとがきで『続・氷点』があることを知り、我慢できずにどしゃ降りの雨の中、本屋まで買いに行って、遂にそのまま朝まで読み続けたという思い出の一冊です。

いま読み返してみても、つくづく自分の人生観や恋愛観に影響を与えた作品だなぁと思う。それはこの著作を語るときに誰もが必ず引用する原罪だけではなく、清潔、誠実でありたいと思い続ける人物同士の清らかな恋愛関係、いつまでもじくじくと思い悩む人の弱さ、妬み誹る人の醜さ。こうありたい、こうなっちゃいかんという人生の規範になってます。もっとも、この歳になっても徹や北原の足元にも及ばないんだけど(笑)

舞台となっているのは約60年前の旭川市。メールも携帯もないのに、現在よりも人と人がちゃんとつながってる。その日どころか、すぐに返事を出さないとせっつかれ、匿名で好き勝手なことを喚き立てる、慌ただしくて無責任な現代のコミュニケーションって、便利になってるんじゃなくて、単に退化してるだけなんじゃないかって気がするんだけど、これって年寄りのグチ?どきどきしながら手紙を出して、やきもきしながら手紙を待って、読むのが嬉しいような怖いような封を切るあの感触をもう一度味わいたいって思うのはただのノスタルジー?
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by dlynch | 2008-05-23 22:37 | book

フランフランを経営しながら考えたこと | 高島郁夫

e0012194_22523541.gif自分の中でビジネス書の波が来てます。『成功のコンセプト』を読んだときに「ビジネス書はこれで当分いいや」なんて書いてたのにね。しかも、興味を引くのは本業に関係のない分野のもの。今回はFrancFrancらしい装丁が目についた『フランフランを経営しながら考えたこと』を読んでみました。

20代の頃のインテリアの基準は無印やFrancFrancだったものの、30歳を越えた辺りからFrancFrancはちょっと気恥ずかしくなり、興味はコンラン辺りに移るわけだけど、そこへAGITOやBALS Tokyoのようなショップが登場して様子が変わってきた。AGITOTivoli Audioを知り、BALSではショップはもちろん、テナントの構成にもセンスを感じ(design fla bicicletta COLNAGOを入れたのはものすばらしい感覚だと思う)、となるとこの複合的なショップを展開しているのはどんな人なのか気になります。

ターゲットを明確に定め、ショップのコンセプトをそこからブラさない。ショップ自身が広告だから、品揃えと店舗、客を大切にする。どうやらこの教科書のような手法を忠実に守ってきたことがFrancFrancの成功のようです。そして、株式会社バルスの成功は、早くからSPAを意識していたこと、焦らずにでも着実に次への布石を打ったこと。

ま、そんな堅っ苦しく読まなくても、バルスが展開するブランドに興味がある人なら、きっと楽しく読めるはず。ちなみに、FrancFrancの初出店とワタクシの初出社は同じ1992年。同期なんだよね(それがどうしたっていわれても)。
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by dlynch | 2008-05-19 22:59 | book

秘密 | 東野圭吾

e0012194_23463673.jpg読みたいと思う作品がないので、本棚から『秘密』を引っ張り出してきました。初めて読んだ東野作品。そして、この後、彼の小説を読み漁ることになった記念すべき名作です。

気がつけば、事件に遭遇したときの平介と全くの同い年になってることに気づきしばし愕然。年月が過ぎるのって早いですね(しみじみ)。前に読んだときから3年以上も経過していることに驚きつつも、あらすじのほとんどを覚えていて、ああやっぱりこの作品が好きだったんだと改めて気付かされました。

『秘密』が好きなのは、現実的にはまず持ってあり得ない現象をベースとしながらも、現実的な夫婦の関係性や心の揺れが丹念に描かれるところ。そして、平介は直子を愛し続けること。ファンタジーな世界のファンタジーなのです。とくに今回は同い年になったということもあって、前以上に平介に自分を重ねていたので、直子の行動や発言に自分だったらどう対処するだろうと真剣に考えながら読んでました。一つ言えるのは平介は家事をすべき(笑)

自分を重ねれば重ねるほど、平介の喪失感が伝わってきて、切なくなる。山下公園のシーンはさらっと書いてあるので余計に切なくなる。そして、最後の秘密。直子が藻奈美として生きてきたのか、直子が消えて藻奈美が戻ったのか。平介は前者と受け取ったようだけど、ボクとしては後者であって欲しい。でないとあまりにも平介が可哀想なんだもん。
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by dlynch | 2008-05-05 23:49 | book

ホームレス中学生 | 田村裕

e0012194_211168.jpgテレビ番組をあまり観ないので、麒麟の田村と言われても実は今でもよく分からなかったりするのだけど、話題にもなってる『ホームレス中学生』を読んでみました。あっという間に読み終わります。

この生成の世で中学生がホームレス生活を送ったという特異な体験談を除けば、さほど読むべき箇所はなく、なんでこれがベストセラーなんだろう?というのが正直な感想。なんだか全体が軽い。軽いから今の時代のベストセラーなのか?

そりゃもちろん、食べ物のありがたみとか人の温かさとか家族のつながりとか、人として大切なことが木訥と綴られてることに好感は持てるんだけど、どこかバラエティ番組のような嘘っぽさを感じてしまう。ところどころ、ウケを狙おうとしている芸人のあざとさも混じっているような気もして、これって邪推かな。

できることなら、お兄ちゃんとお姉ちゃん、そして、お父さんの視点から見た「か、解散!」後の生活を読んでみたい。彼らにはどんな人生があったんだろう?
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by dlynch | 2008-05-04 23:59 | book

いつまでもデブと思うなよ | 岡田斗司夫

e0012194_034813.jpgここのところ、はまる小説家がいないので乱読気味です。活字になってればなんでもいいかなと、興味本位で『いつまでもデブと思うなよ』を読んでみました。ちなみに痩せ型の人生を歩んできたワタシ自身は30半ばの頃にふと計った体脂肪率で22%(=軽肥満)という数値に衝撃を受けて以来、ジョギングで体脂肪を一桁台まで落とし、ここから筋トレと食事で筋肉量を増やし、いまでは12-13%をキープし続けている健康優良児です。えへん。

この本で紹介されているレコーディング・ダイエットとは、要するに食事に関する情報をメモることで、日々摂取しているカロリー量や食事の回数を客観的に把握し、総カロリー量を減らすということなので、摂取するカロリー量下げる-消費するカロリー量を上げる、というダイエットの黄金律からすれば、目新しいことは何もないのだけど、メモする=数値化することは、まずは現状を正しく把握して、目標をどこに置き、何を持って目標達成とするかに欠かせないので、それをダイエットに応用したってことが、この本のポイントかな。なんだかビジネスの話みたい。

後半に綴られる、デブが痩せるとどんなにいいことがあるか小話にはしみじみとさせられるエピソードが満載。うんうんと頷くことができたら、まずはダイエットへの第一歩になるんじゃないかと。がんばれー
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by dlynch | 2008-05-03 23:59 | book

新世界より(下) | 貴志 祐介

e0012194_23444758.jpgとうとう『新世界より』が終わってしまいました。

下巻を読み終えても当初の評価は変わらず。自分史上ベスト3入りです。この小説のおもしろさは想像力が駆り立てられること。呪力というあり得ない力を手にしたときに人はどうなるのか、ミノシロモドキやバケネズミのような想像上の生物をどう捉えるのか、神栖66町の在り方を肯定するのか否定するのか、1000年後の世界に至る過程をどう解釈するのか、その中で自分だったらどうたち振る舞っているだろうか?

これまでの人生で手にしてきた知識や経験をフル動員して、そんな空想の世界であれこれ想像したり解釈することって、知的好奇心が刺激されることこの上ない。

バケネズミひとつとってみても、読者の数だけ、あのメタファーの解釈の仕方があるだろうから、中には拒絶感がある人もいるかも知れないけど、きっと何かを感ずるができる物語です。そんな作品はなかなか見あたりません。

それにしても、この世界観を生み出した貴志さんの想像力ってすごい。今から1000年後って、普通に考えたら、恐ろしくテクノロジーが発達した世界で、クリーンで無機質な生活を営んでそうでしょ?それが明治の後期程度のローテクで、牧歌的な山間に暮らしてる。でも、超ハイテクな図書館が出現してみたりする。そこに至る現代からの歴史、その歴史から学んだ1000年後の倫理観。想像だけじゃなくて、そこにリアリティを与える知力とも相まって、ただただ感嘆するばかりです。

そして、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』の第2楽章から生まれた『家路』にまつわるエピソード。あぁ泣けてきた。奇狼丸にも。

これだけ書いても感動したことの10%くらいです。ぜひその手に取ってみてください。
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by dlynch | 2008-04-19 23:44 | book