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カテゴリ:book( 133 )

効率が10倍アップする新・知的生産術 | 勝間和代

e0012194_12442464.jpg今ものすごく忙しい。家に仕事は持って帰らない、土日は仕事しないのが信条だったのに、ここのところはまるで守れていない。そんな状況では物語や文章を堪能する心の余裕が持てないし、でも、手元になんか活字が欲しいなということで、ビジネス書のベストセラーの棚から手にとったのが『効率が10倍アップする新・知的生産術』

300ページ近い紙面を要約すれば、1)時間を無駄に使わないこと 2)ITで効率化を図る 3)生産性を落とすことはしないの3つです。その辺が具体的に説明されてたり、関連する資料が明示されてるので、なかなか分かりやすい。確かにこの通りにやれればフツーのサラリーマンの効率は10倍になるだろうな。

PCを補助脳として使うとか、本代をけちらないとか、生活習慣が大切だとか、GiveGiveGiveとか、全くその通りだと頷くところも多いし、てんやのビジネスのくだりのようにそういう発想しなきゃ!と教わったことも多いので、筆者の言葉を借りれば1,500円分の価値は十分にあったんだけど、こんなにも空白の時間を必死になって埋めようとする人生は嫌だなぁ。

本は時間をかけて丁寧にじっくり読みたいし、走ってるときくらいは頭を空っぽにするか好きな音楽を聴いていたい。昼飯くらい情報交換とか考えずにゆっくりとりたいしね。
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by dlynch | 2008-02-23 12:52 | book

誰か Somebody | 宮部みゆき

e0012194_1834277.jpg日常を切り出させたら宮部みゆきさんに敵う作家はいないんじゃないかなぁ。偉そうな書評を許してもらえるなら、久しぶりに感心してしまったのが、『誰か Somebody』です。

ミステリーとしてはとても地味なので、犯人は誰だろう?どうやって殺害したんだろう?こいつが怪しい?これなにかの伏線?というドキドキハラハラ感は薄いんだけど、聡美が抱える過去、聡美と梨子の確執、梶田が残した過去の謎、そして、図らずも今多コンツェルンと関わりを持ってしまった三郎の孤独、三郎の菜穂子と桃子への愛情。それぞれの人間模様が丁寧に、ときどきおもしろおかしく描かれていて、一言一句逃せない読書を楽しめました。

とくに終盤の水津町歴史記念館の一幕。万華鏡を比喩にした三郎の心境の描き方は好きだなぁ。これぞ読書の醍醐味。二回読み返しちゃった。歌謡曲や童話が効果的に取り入られているのも楽しいし、なんともステキな小説です。
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by dlynch | 2008-02-11 18:34 | book

成功のコンセプト | 三木谷浩史

e0012194_23503917.gif本は大好きですがビジネス書の類は滅多に読みません。だってプライベートな時間を仕事に使ってるみたいでつまんないから。でも、サラリーマンを、しかも、ITのマーケティングという職種に従事してると気になるのも事実。そんなわけで久しぶりに読んでみました。ゴールド会員になってしまうくらい利用している楽天の三木谷さんが書いた『成功のコンセプト』です。

一橋を出て、テニス部のキャプテンをやっていて、興銀に入って、ハーバードでMBAを取得して、楽天を設立して、流通総額が1兆円超えて、という経歴を見てると雲上人のように思えますが、ここに書かれてることは至ってまっとうなこと。もっとも、そのまっとうなことがなかなか実行できないんだけどね。実行できないことに自分で言い訳してみたり。

楽天の創生期のエピソードとか、会議短縮のところとか、テニスの球拾いとか、インターネットに対する考え方とか、三木谷さんの信念とか、ニヤリと笑ったり、ほほぅと感心したり、そうだよそうだよだからウチの会社はなっとらんと憤っててみたり、いろんな風に楽しめます。それにしても三木谷さんって仕事が大好きな人なのね。ま、そうじゃないと社長業なんて務まらないと思うけど。

企業人としての心構えのエッセンスが詰まってるので、ITな人でなくても十分に参考になります。あぁやっぱやんなきゃ、よし明日からやろう!と背筋を伸ばしてくれるきっかけになるのは確か。うし、ガンバろっと。でも、ビジネス書はこれで当分いいや。
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by dlynch | 2008-01-30 23:50 | book

閉鎖病棟 | 帚木 蓬生

e0012194_2223276.jpg『閉鎖病棟』というタイトル通り、とある病院の精神科病棟の人々を丁寧に淡々と綴る前半は、あだ名で呼称されてるためか人物関係や登場人物の症状がなかなか掴めず、また、誰の視点で語っているのかが分からなくて混乱してしまい、活字をただ追うだけだったものの、とある殺人事件をきっかけに引き込まれました。

といっても、引き込まれたのは事件の種明かしや犯人捜しではなく、その背景にある動機にです。丁寧に病棟の様子を綴っていたのはこのためだったのかと納得。

したり顔の知識人なら、秀丸さんがとった行為を文化的ではないとか、非人道的だと責めるんだろうけど、家族や親しい人を亡くした人なら、誰にも批判できない当然の行為だと思う。「利益ですか-」に続く言葉に集約される感情でいっぱいになるはず。彼女はみんなの希望だったわけだし。その秀丸さんの決意、チュウさんの覚悟、島崎さんの再生。何度も読み直しました。

一方でチュウさんの妹夫婦に腹を立ててはいけないとも。こうした物語を読んでしまうとどうしても、患者側に感情移入しちゃうけど、実際に家族の誰かがああなったら、肉体的にも精神的にも、経験したことのない者には想像できない苦痛に苛まれるんじゃないかと。

明るい話ではないけれど、読了後はなんだか幸せな気持ちになれる不思議な魅力を残してくれます。
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by dlynch | 2008-01-21 22:23 | book

見えないドアと鶴の空 | 白石 一文

e0012194_2316445.jpg実は去年のうちに読み終えていた『見えないドアと鶴の空』。前に読んだ『僕のなかの壊れていない部分』が気に入って手に取ってみたんだけど、不思議なタイトルから連想される不思議な作品を期待していたら、不思議な能力が描かれてるものの、骨子は一昔前のTBSのメロドラマのよう。

『一瞬の光』でもそうだったように、この人のセックス描写は生々しくて、それがよりメロドラマっぽく、湿っぽくしている。昴一は確かに真摯に生きようとしてるけど、絹子から逃げ、由香里に溺れてる姿を見てるとただの節操のない、だらしない男にしか見えなくて。エリート然とした人が登場して、しどけない姿を見せつけるのも(このパターン多い)拍車をかけてるし。

また、日常的なお話に超常現象を持ち込むのは嫌いじゃないけど、今回の能力の見せ方は好きじゃない。すべてはラストの演出のために後付けされたような印象を受けちゃって、この手の能力者に必要な悲哀が中途半端になっちゃってる感じ。新年の一作目ながら今ひとつなのでした。
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by dlynch | 2008-01-07 23:16 | book

白楼夢 | 多島斗志之

e0012194_22593371.jpgこれまでに数多くの小説を読んできて、本棚に残しておこう=個人的に好きだなぁと思う作品は、物語やメッセージもさることながら、文体に因ることが多い。その意味で、多島さんが醸し出す独特の空気感のある文体は、過去にも何度か触れてるとおり、代え難い魅力を孕んでます。

『白楼夢』
の舞台は1920年代のイギリスの植民地だった頃のシンガポール。シンガポールには行ったことがないし、この頃の歴史なんてほとんど知らないのに、なんだか埃っぽい街の雰囲気がその文体から漂ってくる。

シンガポールの顔役として、知らず知らずの間に上り詰めていく林田の虚無感、その林田を追うケイン虚無感、殺された白蘭の虚無感、そしてその裏で蠢く政治的な思惑。全体を退廃的なムードが覆っていて、そのざらついた感覚が独特のミステリー感を煽ってくれます。ネタバレなので反転>>曹海烈のあっけない告白と鳳生の絡みがなかったことが拍子抜けだったけど、現在と回顧のバランス、その回顧の時系列の並べ方が絶妙で読ませてくれます。そう、読ませるんだよねぇ。
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by dlynch | 2007-12-03 22:59 | book

駆け込み交番 | 乃南アサ

e0012194_23403088.jpgうちのすぐ近くに交番があります。住宅街なので、おそらく凶悪な殺人事件や組同士の抗争とは無縁の、道案内とか拾得物の届け出とか、そんなんがメインの平和な仕事なんじゃないかなーとのほほんと(そう見える)立番してるお巡りさんを見てると思うわけですが、実際は一般人には想像できないほど大変なのかもと『ボクの町』を読みながら思ったもんです。『駆け込み交番』はその続編。

研修時代は警察手帳に彼女のプリクラを貼ってた高木聖大くんも少しは成長して、警察官としての責務に目覚めながらも、相変わらずなめた口の利き方をしつつ、でも彼女は欲しかったり、警察の縦社会に順応し始めたりと、まっとうな社会人的な生活を歩み始めた若者の混濁した様子がなんだかほほ笑ましい。警察官とはいえども実体はごく普通の人間だから、当たり前といえば当たり前だけど、こういう視点で警察を取り上げた小説ってなかなか見あたらないですよね、そこがこのシリーズ?の新鮮なところ。

聖大くんの成長と共にこの『駆け込み交番』の核を成しているのが、第一章で語られる「とどろきセブン」の面々。必殺仕事人よろしく警察では対処できない事件を裏から成敗する一癖もふた癖もある老人たちの趣味だったりするわけですが、次作では彼らがどんな暗躍をしているのかが知りたいかなと。ちなみにボクの中の文恵さんは八千草薫さんです。
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by dlynch | 2007-11-27 00:07 | book

走ることについて語るときに僕の語ること | 村上春樹

e0012194_1328577.jpg村上春樹のファンで、ジョギングが日課(といっても週に3回走ればいいほうだけど)となりゃ、『走ることについて語るときに僕の語ること』は読まないわけにはいかないでしょ。ちなみに英語的なこのタイトルはレイモンド・カーヴァーのタイトルから引用したそうです。

日常的に走ることが、フルマラソンを走ることが、身体を鍛練することが、職業的作家である自身にとってどんな意味を持っているのか?一般的な企業人にも通ずるところがあって、興味深い。一般的な小説家のイメージって、閃いたインスピレーションをバーッと文章にしていく芸術家的なところがないですか?でも、考えてみれば当たり前だけど、一日や二日で小説が書けるわけがないし、集中力を維持して筆を運ぶには体力が必要なんだよね。

印象に残ったのは、齢58になる村上春樹が「老い」について語っていること。確かに運動を続けることは、昔取った杵柄的に記憶の中にある若さを思い出してしまうことでもあって、マラソンの場合は残酷にもタイムという数字で示されちゃうからよけいに意識せざるを得ない訳だけど、村上春樹が老いについて語っているのはなんだか不思議。いつまでも、パスタ茹でて、海岸でビール飲んでるイメージなんだよね。

ところで、こうして彼のエッセイを読んでみると、これぞ自分だと思っていた性格や性行には、村上春樹の影響をおもいっきり受けていることが垣間見えて、ちょっと恥ずかしい・・。
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by dlynch | 2007-11-25 13:33 | book

半島を出よ(下) | 村上龍

e0012194_23393953.jpg上下巻を読み終えて感じたのは、『半島を出よ』は村上龍らしい小説だなぁということ。系列は『愛と幻想のファシズム』や『五分後の世界』と同じ。そこにマイノリティとマジョリティの構図が持ち込まれて、日本の危機管理能力の低さや責任の所在の曖昧さが指摘され、危機を現実と捉えられない国民の姿が投影され、マスコミの視点の甘さが揶揄される。その代わりSMやエロはなし。

村上龍らしいのは文章もそう。あんな風に暴力的で緻密でグロテスクで、息が詰まるような文章を書ける文才ってすごい。テーマがテーマなだけに、北朝鮮のコマンドや兵器、化学の描写に目がいきがちだけど、「無添加のワッフルをオーブンで焼き、国産のレンゲの蜂蜜をかけて、有機農業で作られたフルーツトマトと、その日しぼりたてだというオレンジジュースと、小岩井農場の低温殺菌の牛乳」なんて描写は普通できないでしょ?イシハラの妙な言い回しにしてもそう。作家だからといえばそれまでなんだけど、一般的な作家と較べてもレベルが違う。漫画でいう井上雄彦のような圧倒的な違い。

ただあまりにも書き込み過ぎなのでは?という箇所も見受けられるので(コマンドたちの思い出やタケイが武器を披露するところとか)、そこを軽くして日本政府や福岡の役所、業者、市井の人、マスコミの視点にももう少し誌面を割いて欲しかったかな。もう一冊分書いてくれてもいいくらい。

いずれにせよ、よい意味でいろんなことを考えさせられました。話題になったのがよく分かる。マジョリティにいるんだから、せめてヒトとして生命力のある生き方をしないと。
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by dlynch | 2007-11-10 23:43 | book

半島を出よ(上) | 村上龍

e0012194_110161.jpg久しぶりの村上龍です。

かの『愛と幻想のファシズム』がリリースされたのが大学生のときで、『69』『テニスボーイの憂鬱』も同じ頃。その前には『コインロッカー・ベイビーズ』『限りなく透明に近いブルー』があり、後には『フィジーの小人』『超伝導ナイトクラブ』がありと、この頃が作家としてもっともノってたときではないかと。その後、村上龍はさらに経済、政治、科学に傾倒していく訳ですが、それがこの『半島を出よ』に集約されてます。

北朝鮮のコマンドが福岡を制圧する。ここまでは誰でも思いつけるかも知れない。だけど、なぜ制圧するのか?どうやって制圧するのか?兵士のモチベーションは?制圧後のビジョンは?日本はどう迎え撃つのか?福岡市民はどうなるのか?米国や韓国はどう動くのか?

フィクションにリアリティを与えるためには、ものすごい想像力と情報が必要なわけで、経済、政治、科学、軍事の知識をたっぷりとため込んだ村上龍がいつもの暴力的な筆力でぐんぐんと物語を進めていきます。しつこいくらいのコマンドや武器にまつわるディテールもあいまって、ホントに未来の日本はこうなっちゃうんだと錯覚するくらい。

セリフはほとんどなく、専門用語も多く、句読点が少ない文体なので(学生のころ、無謀にも真似たことがあった)、お世辞にも読みやすいとはいえないけど、気がつけば残すところあと2章。さて、どんなフィナーレが待っているのか。
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by dlynch | 2007-11-09 22:32 | book