『終戦のローレライ』を読んだあとだったので精根尽き果ててしまって、なかなか次の小説が手につかず、友だちに勧められながらもベッドサイドに置きっぱなしだった『13階段』。出張のお供にと持ち出したのが大正解でした。1人で飲むときは大抵文庫本を携帯するんですが、泊まってるホテルのバーで読み始めたら、コレが止まらない。1時を回った頃にバーテンダーにやんわりと閉店を促され、結局部屋に戻ってから3時頃まで読んでました。
基本は犯人捜しのミステリーなんですが、ベースには死刑制度の在り方という重いテーマが横たわっていて、死刑や犯罪に対してさまざまな立場の人が登場するので、人間ドラマとしても物語にのめり込んでしまいます。三上と同じ立場に立たされたら?南郷のように刑務官として死刑を執行することになったら?樹原のように記憶を失ったまま死刑をうけることになったら?
ミステリーとしても優れているのは、こいつが隠してることはたぶんこーゆーことだろうな、あれ?もしかして違うかも、こいつがこいつだったんだ!え?違うの?じゃあ、あいつは?という具合に、何か隠してあることを匂わせつつも、明らかになったこと(明らかになったと思わせたこと)が、別の疑問を呼んでくるという展開のおもしろさですね。そんな極上のストーリーをシンプルな文体でぐんぐん引っ張っていく。
高野和明さんのこれからの作品が楽しみです。