最初に
『葡萄と郷愁』を読んだのは15年くらい前。社会人になりたてほやほやの頃に読んだ記憶があります。
舞台となっているのは1985年の東京とブダペスト。ベルリンの壁が崩壊するのはこの4年後、JRが法人化するのが2年後なので(純子は国電で田町に向かう)、2008年の立場で読むと古い印象を受けます。最初に読んだときは古さを感じなかったから、これが年月なんですね。もっとも、こうしてアトランタのホテルからブログが投稿できるような現代では、国際電話を待つことも、電話以外のコミュニケーションの手段が手紙しかないこともさほど意味を持たないから、そのことを肌で感じられたときに読めたことは幸せだったかも。
時間にすれば僅か6時間の物語。同日同時刻に遠く離れた東京とブダペストで、それぞれ人生の決断に揺れる2人の女性を描いているわけですが、純子の悩みがよく分からない。どう読んでも、浅はかなJJ読者(読者の方スイマセン)、当時の言葉で言えば3高女そのもの。カムストック夫人が話したことはよく分かるんだけど、それは結果論だし、いまそこで村井に行くのは許せないんだけどなぁ・・。実は対するアーギの決断にも納得いきません。そこは振り切って欲しかった。