激務の最中に読んでいたせいか、なかなか前に進まず、この前の飛行機の中でようやく読み終えた
『追憶のかけら』。それ自体はおもしろいものの、全体の1/3に達そうかという旧仮名遣いの手記が現代人の頭にはなかなかスムーズに入ってこなかったようで。
これくらいの厚さの小説になると、相当に込みいった事情が驚愕の事実と共に明らかにされたり、作者の痛烈なメッセージがそこかしこに垣間見えたりと、読了が近づいてくると、早く終わって欲しいような、終わって欲しくないような、そんな気分になるものなんだけど、この作品については、ふーんで終わってしまいました・・。謎解きの意外性に今ひとつ説得力がないことと、最後の最後にとってつけたようなエピソードがあるからじゃないかと思うけど、どうだろう?そんな理由で、そこまでするのかなぁ。
中盤の佐脇の手記は、貫井さんが相当に勉強を積んで書いたんだろうなと思える力作で、確かに小説全体の雰囲気を盛り上げているんだけど、これが手記として存在していることの意味がどうにも薄い。その心境に至っている作者が、手記をこんなドラマティックに書くんだろうか。それに手記にまつわるエピソードがそんなんだったとは。
そこが咲都子も惚れたいいところであるにせよ、松嶋の行動にはいささかとろいところがあり、えっーそこに引っかかるなよーと思った箇所もちらほら。全体的にピリッとしない、もわっとした感じが残ったまま終わっちゃったのでした。